茶 道


茶道は代表的な日本の文化ですが、多くの人々が好み、四百年程続いてきました。
華やかな茶会は今もたくさん行われています。
殆どが、茶室という日常生活には使われない部屋で行いますが、一度機会があれば茶室に座って茶を飲んでみて下さい。
雰囲気がわかると思います。
茶会には非常に高価なものや芸術的な道具や茶碗が使われ、又、美しい着物の人々がもてなしてくれます。
お菓子をいただき、茶を飲み、いい気分で時を過ごす訳ですが、それだけではないのです。
では、なんでしょう?

想像してみて下さい。
茶道は、下剋上の戦乱の代に生まれ現代に受け継がれたのです。
戦いで血生臭い中、一服の茶で静かな時を必要とした人々がいて、単に茶を飲むというよりも、静かな茶室でゆっくりとした時を持ち、
心を落ち着かせるのですから、独りで点て自分で飲む時もあります。
心を澄ませ考え事をするのにもいいでしょう。
茶室に入る時には庭のつくばいで口と手を洗い、同時に心も清め茶室に入ったのです。
茶室は厳粛な場所として扱われました。
独りで茶を点て飲み、又、そばに分かりあう友人がいればもっといいと思いませんか?

この楽しみかたが形となり作法として守られてきました。
ですがもともと、精神的な者を求めたわけです。
その上、論理的に相手に説明するより、直感的で感性を磨く方法を好む文化なので、非常に厳しく形が受け継がれました。
本当は、精神を伝えたわけです。
一見華やかな茶会と厳しい精神とが、実体と影のように伝わってきたのです。
死と直面した不安定な時代の男たちの心や感覚を分かろうとは思いませんが、彼等が厳しい状況の中で最善を尽くす為、
茶室の中で精神を集中し、現実を受け入れる覚悟をしていたであろう姿勢は想像できます。

能にしても狂言にしても、無駄を省いて形を簡素化した美しさを追求しています。
同様に、茶道の所作も表現では静かで直線的で、作法さえ守れば殆ど言葉を交わさず、言葉以上のものを表現し、感じ合うのです。
黙っていても分かりあおうとするのです。
鋭い直感力を磨き、研ぎ澄まされた感性の日本人――まるで剣の達人や勝負師のように一瞬が見える人みたいですが――、
多くの日本人が好む精神が形として守られてきただけです。
洗練された趣味の道具や美意識を理解するには、それなりの感性がいりますし、又、相手の気持ちを感じとるのも感性がいります。

あなたが茶室に座り、茶を飲みながら静かな時間の中でほっとし、リフレッシュして出てくるならば、
茶道は理解されるでしょう。

裏千家流茶道教授   
天野宗恵   

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